Weezer / Weezer (Blue Album)

Genre: Geek RockPower PopArtist: Weezer

私が人生で一番聴いたと思われるこのアルバムとの出会いは、今はもう無いSEIBUデパートにあったWAVEでのことでした。当時高校2年だった私は、まだ洋楽を聴き始めた頃で、Bon JoviやAerosmithなどのハードロック系のバンドや、The Beatlesなどの古典を聴いていたのですが、いわゆるオルタナティブロックというものは、まだNirvanaくらいしか聴いていなかったと思います。

WAVEの棚に面出しで並んでいた、この素っ頓狂な顔をした4人が青い背景に並んでいるCDの風景が、今でも不思議と思い出せます。残念ながら、私はその時にこのアルバムの良さがわかりませんでした。もちろん「Buddy Holly」や「Undone – The Sweater Song」が話題になっていたことも知っていて、何度も聴きましたが、印象は、Bon Joviみたいなはっきりとしたサビが無い、というような感想だった気がします。「Buddy Holly」に至っては、フッフッーの部分がダサいと顔をしかめた記憶があります。

しかしながら、良くないとは思いつつ、なぜか相当な回数を聴きました。まだ当時の私は耳が出来上がっていなくて、いわゆるオルタナティブのサウンドや曲調についていけなかったのです。その後、私がこのアルバムの良さに気付くのは、セカンドアルバムの『Pinkerton』が出てからになります。逆にそのタイミングでは私の方の耳も育っており、『Pinkerton』にはどハマりして聴き狂いました。その時に振り返って聴いたこのブルー・アルバムには、当時この良さがわからなかったのが信じられない、という名曲の数々。当時まったく聴き飛ばしていた「The World Has Turned and Left Me Here」や「Say It Ain’t So」「In the Garage」なども含め、一切の捨て曲なしの超名盤であることに気づきました。

今となってはパワーポップという括りで語られることも多いですが、当時はカレッジ寄りのUSオルタナティブというスタンスだったと思います。私も当時は、Weezerをパワーポップとは思っていませんでした。今聴いても「Undone – The Sweater Song」なんかにはUSオルタナティブのダウナーで硬質なサウンドも感じられますし、「The World Has Turned and Left Me Here」なども、曲調自体が憂鬱なグルーヴに悲壮感のある歌詞と、いわゆるパワーポップとは違ったアプローチかと思います。

Weezerの偉大なところは、それまでは本当にロックはマッチョネスのものだったのを、ギーク、オタク側と言ったら言葉がアレなんですけど、文化系寄りに持って来たことだと思います。MetallicaやAnthrax、いわゆるメタルやハードロックバンド、それから良くてもNirvanaなどのグランジが主流の中(カート・コバーンも、私から見たら十分にマッチョに見える。もちろん内面は違うと思いますが)、それに対しリヴァース・クオモは、のちにハーバード大に進むインテリ、見た目も小柄で黒縁メガネ。今でこそ、このような文化系男子がロックをやることも珍しくはなくなりましたが、当時は本当に衝撃でした。誌面でも、泣き虫ロックだの弱虫の逆襲だの、そのような切り口での紹介ばかりだった気がします。

まさに私も文化系側の男子だったので、クオモが私に与えた勇気と影響は計り知れません。大学時代には、なんとか貯めたお金を叩いて、サマソニからの渋谷クアトロ単独も見に行きました。当時のライブの定番の締め曲は「Surf Wax America」。まだ90年代の空気が残っていた頃でしたので、モッシュとダイブで大盛り上がりの、思ったより激しいライブだった記憶があります。その後に企画したDJイベントでは、等身大クオモ(ジャケをカラーコピーで繰り返し等身大まで引き伸ばし、段ボールに貼ったもの)を作ったのも良い思い出です。カラーコピー代で、意外と1万円くらいかかった気がします。「No One Else」は何度かけたことか。

2025年の30周年記念のブルー・アルバム再現ライブは、東京では残念ながら「No One Else」抜きのセミコンプ再現でしたが、本当に見られて良かった。高校生の時に出会ってから30年、それからはひたすらに「Weezerっぽい」とレビューされているものを聴きまくり、気づいたら確かにパワーポップが好きになって、その他も含めて音楽の深みにハマることになったのですが、いまだにこのアルバムを超えるものには出会いません。

間違いなく、90年代における私にとってのベストアルバム。全文化系男子にとっての金字塔ロックアルバムだと思います。(Haru)

Influences

Nirvana / Pixies / The Beatles / The Cars / The Beach Boys(いずれも本人の発言から)

Release Info

  • Year1994
  • LabelDGC
  • FormatLP

SS Report

概要

ロサンゼルスのバンド、Weezer の1作目のアルバムです。1994年5月10日に DGC(Geffen 傘下)からリリースされました。タイトルはバンド名と同じ『Weezer』で、ジャケットの色から「Blue Album」と呼ばれています。全10曲、約41分です。

当時のメンバーは Rivers Cuomo(ボーカル、ギター)、Matt Sharp(ベース)、Patrick Wilson(ドラム)、Brian Bell(ギター)です。

制作

録音は1993年の8月から9月にかけて、ニューヨークの Electric Lady Studios で行われました。プロデューサーは The Cars の Ric Ocasek、エンジニアは Chris Shaw です。

録音の途中で、最初のギタリストだった Jason Cropper がバンドを離れ、Brian Bell が加わりました。Ocasek の回想では、Cuomo が Cropper のギターパートをすべて自分で録り直したそうです。Cropper は「My Name Is Jonas」の共作者としてクレジットされています。

音作りには決まりごとがありました。リバーブは使わない、ギターはすべてダウンストロークで弾く、というものです。Chris Shaw は、ギターとベースを「ひとつの10弦楽器」として扱うのが全体の考え方だったと説明しています。また、Ocasek の助言でギターのピックアップをブリッジ側に切り替え、明るい音になったと Cuomo が語っています。

コーラスを磨くため、スタジオに入る前にバーバーショップ・カルテット風の曲を練習したという話も残っています。ジャケットは、Cuomo が The Beach Boys の廉価ベスト盤カセットから着想したものです。

シングル・代表曲

  • Undone – The Sweater Song(1994年6月、1枚目のシングル。MV は Spike Jonze)
  • Buddy Holly(1994年9月。MV は Spike Jonze。1995年の MTV VMA で4部門を受賞)
  • Say It Ain’t So(1995年7月。MV は Sophie Muller)
  • My Name Is Jonas / In the Garage(レビューでよく挙がる曲)

本人の発言

  • Rivers Cuomo は、当時は本気で自分たちを「次の Nirvana」だと思っていた、と振り返っています。重くて胸を打つロックバンドとして受け取られるつもりだったので、笑えるバンドとして受け取られたことに傷ついたそうです。(Rolling Stone、2021年)
  • Cuomo は、1作目には「抑えること」が必要だったと語っています。80年代後半の複雑で技巧的な志向を意図的に抑えて、3コードの骨組みだけの曲に絞ったそうです。その手本として Pixies、Nirvana、The Beatles を挙げています。自分のルーツは Metallica、Slayer、Judas Priest などのメタルだとも話しています。(AllMusic、2015年)
  • Cuomo は、もともとメタルバンドに入るつもりでコネチカットから出てきたと話しています。ブックレットに写る Judas Priest と Quiet Riot のポスターが、その手がかりだそうです。(Los Angeles Times、2024年)
  • 外部のプロデューサーには乗り気でなかったそうです。ただ、スーパーで The Cars の曲を聞いて「Weezer みたいだ」と感じ、この人にしようと思ったと Cuomo は語っています。(Los Angeles Times、2024年)
  • Cuomo は、1作目の音には少し居心地の悪さがあったとも話しています。クラブでの自分たちはもっと荒く攻撃的だったそうで、その反動で次作『Pinkerton』はセルフプロデュースになりました。(Guitar World、2021年。Audacy の記事経由)
  • 「Say It Ain’t So」のもとになった家族についての思い込みは誤解だったと、のちに父と連絡を取り直して知った、と Cuomo は語っています。(Los Angeles Times、2024年)
  • バンド名は、両親の離婚後に父が呼んでいたあだ名から来ているそうです。(Rolling Stone、2021年)
  • Matt Sharp は、「Buddy Holly」がノベルティ扱いの曲になって、バンドの信用を損なうのではと心配していたそうです。発売前は悲観的で、親戚が買う枚数を紙に書き出して約340枚と見積もった、とも話しています。(Rolling Stone 2021年、Los Angeles Times 2024年)
  • Brian Bell は、初めて「Say It Ain’t So」を聞いたとき、地元のバンドがこんな曲を書けるはずがない、カバーだろうと思ったそうです。(Los Angeles Times、2024年)
  • Patrick Wilson によると、Cuomo は「50曲できるまでリハーサルしない」と言っていたそうです。(Los Angeles Times、2024年)

評価

  • Rolling Stone(Paul Evans、発売当時):「Undone」は一見よくあるスラッカー賛歌に見えるが、バンドはそれを超えている、と評価しました。Cuomo の人物描写、自虐的なユーモア、「My Name Is Jonas」のワルツのテンポを挙げています。
  • The Washington Post(Mark Jenkins、1994年):感じよく不遜な瞬間と、ただ生意気なだけの瞬間を行き来する、という留保つきの評でした。(Wikipedia 経由で確認)
  • Entertainment Weekly:1994年の評は中程度でしたが、2014年に別の評者が最高評価に改めています。当時と後年の評価の差を示す例です。(Wikipedia 経由で確認)
  • Pitchfork(Jillian Mapes、2017年の回顧レビュー):孤立、成長の停滞、社交不安を捉えた作品だと論じています。発売当時は多くの批評家がオルタナの便乗組として片づけ、評価が定着したのは MTV を通じてだったと指摘しています。
  • AllMusic(Stephen Thomas Erlewine):オルタナと70年代のロック、パワーポップを独自に融合した作品としています。当初は批評的に軽く見られたが、時が証明した90年代を代表する1枚で、悪い曲がないと評しています。
  • BBC(Richard Banks、2004年の Deluxe Edition 評):実質的に欠点のないレコードで、後に続くエモやポップパンクへの影響が続いているとしています。留保は、ボーナス曲の一部が型どおりであることです。
  • The Ringer(Rob Harvilla、2021年):真剣な意図と、笑いとして受け取られたことのずれが、Weezer のキャリア全体を動かす緊張になったと論じています。MV が曲そのものを覆い隠した点も指摘しています。
  • リスト:Pitchfork の90年代ベストアルバム(2003年)、Rolling Stone「500 Greatest Albums」(2003年、2012年、2020年の各版)、NME「500 Greatest Albums」(2013年)に選ばれています。(Wikipedia 経由で確認)

出典

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